ここでご紹介する免疫解析はわれわれがこれまでに開発してきましたWT1ペプチドがん免疫療法ばかりではなく、
国内外の医療機関で実施されるがん免疫療法を受けた患者さんの体内でおこった免疫系の変化をとらえ、
新たながん免疫療法の開発に貢献しています。
さらにがん治療中の方ばかりではなく、健康な方の免疫系についても解析対象をひろげ研究を行っています。
抗体は血液細胞であるBリンパ球から分化した形質細胞が産生する分泌タンパクです。
抗体にはIgM, IgGやIgAなどの種類があります。
感染症の診断においては、病原微生物の構成成分に対するIgM抗体やペア血清中のIgG抗体が
感染の診断に、IgG抗体が既感染の診断や感染症に対する抵抗性の評価に用いられます。
抗原特異的なIgE抗体は花粉症などのアレルギーの診断に用いられています。
このように体内でつくられる抗体は、免疫系について様々な情報を与えてくれます。
われわれがこれまでに開発してきたWT1を標的としたWT1ペプチドワクチン免疫療法では
投与したWT1ペプチドに対するIgG抗体の産生が良好な患者さんの臨床成績につながり、
このWT1ペプチドIgG抗体が「がんの目印WT1」に対する免疫系の活性化をあらわす良いマーカーになることを明らかにしました。
体内の細胞ではしばしば異常細胞が生じますが、体内の免疫系が、これらの異常細胞を排除することにより
がんの発生を防いでいると考えられています。
最近の研究では、加齢に伴い免疫系に様々な変化が起こり、
免疫系の機能低下や自己の成分に対する免疫反応という免疫異常の増加傾向があらわれてきて、
感染症や自己免疫疾患、がんなどの様々な病気につながる可能性が報告されています。
これらの知見に基づき、老化した異常細胞を標的としたセノリティクス療法が提案されています。
最近我々は免疫能のピークと考えられる若年健常者が「がんの目印」に対して
免疫反応(抗体の産生および免疫細胞の反応)を持つことを明らかにしました。
現在これらの知見にもとづいて解析研究を進めています。
ELISPOT assayは抗原特異的な細胞性免疫応答を解析する方法として広く行われています。
ただ、アッセイには個々の細胞から放出されたサイトカインのスポットを読み取る高価な装置(spot reader)が必要です。
そこで我々はreaderなしでspotを読み取る方法を開発するとともに、スポット解析を画像解析ソフトとして広くつかわれる
ImageJソフトウエアを用いる方法を確立しました。
Reader-free ELISPOT assay
WT1 Trioペプチドワクチン医師主導臨床試験の中での免疫解析