4 ヒトの体温調節異常の解析

女性の冷え性または高齢者での体温調節能の低下などについて生理学的な観点からの研究を行っています。冷え性(冷え症)は国語辞典では「血行が悪くて体の一部、特に下半身が冷たく感じられる症状。また、その体質。」とありますが、その病態解析は未だなされていません。当研究室では、冷え症を訴える女性を募り、寒冷暴露時の皮膚血管反応、代謝量、体温、また血中の各種ホルモン濃度などを指標とし、冷え症の解析を行っております。また、高齢者についても同じような研究を行っております。


冷え性(冷え症)とは?

   ヒトに限らず恒温動物には、体温を調節するための体温調節系が備わっています。皮膚血管の拡張収縮反応、発汗、ふるえ熱産生というような自律的な体温調節反応をコントロールする自律性体温調節系と、さらにヒトにおいて典型的な衣服の着脱、冷暖房のon/off、またその他の動物で主に観察される涼しい環境や暖かい環境を求めて移動するといった行動による体温調節系(行動性体温調節系)の大きく二種類に分類されます。これらの体温調節系を駆使して、体温を一定の範囲内に維持しています。自律性の反応は、その名の由来通り意識することなく自然に体が反応し体温をコントロールするシステムです。一方の行動性体温調節反応では、反応を発現するきっかけが必要です。例えば、なぜヒトが夏場に部屋に入った途端、クーラーのスイッチをONにするのか?その答えは、そのヒトが「暑い!」という感覚をもったことに起因しています。つまり、行動によって体温をコントロールするには、周りの環境に対する温熱的情動感覚が必要になります。この温熱的感覚というものは、各個人によって差があるという現実を実感したことのある人は多いと思います。冬でも薄着のヒトもいれば、夏でも長袖長ズボンといった服装のヒトもいます。夏場にがんがんに冷房を利かせた電車の車両もあれば、その隣に「弱冷房車」もある。どういった経緯でそのような機転の利いた対応をとっているのかは解りませんが、各個人によって温熱的感覚が違うという事実をあらためて感じさせられます。暑さ感覚に限らず、寒さ感覚についても個人差が大きいようです。

   冷え性(冷え症)を訴えているヒトでは寒さに対する温熱的感覚はどのようになっているのでしょうか?

参照

Nagashima et al. (2002)-Thermal regulation and comfort during a mild-cold exposure in young japanese women complaining of unusual coldness. Journal of Applied Physiology 92, 1029-1035. 

 

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