研究内容

当研究室では、看護技術看護管理医療安全などをテーマに研究活動を行っています。

研究をいくつか載せておりますので、ぜひご覧ください。

点滴確保時、駆血前の局所加温は有効?

Yuki Yamagami, Kohei Tomita, Tomomi Tsujimoto, Tomoko Inoue: Tourniquet application after local forearm warming to improve venodilation for peripheral intravenous cannulation in young and middle-aged adults: A single-blind prospective randomized controlled trial. International Journal of Nursing Studies, Volume 72, 2017, Pages 1-7 https://doi.org/10.1016/j.ijnurstu.2017.03.009

72人の健常者を2群(介入群,対照群)に分け、介入群には40℃に温めたホットパック、対照群には常温のホットパックをそれぞれ15分ずつ参加者の前腕にのせたあと、エコーで血管径を測定し断面積を比較しました。

加温した介入群のほうが、対照群に比べ断面積は2.2㎟、最短径は0.5㎜、最長径は0.5㎜大きくなっていました。

穿刺前に加温する重要性と、どのくらいの時間加温すればどのくらい拡張するのかを数値化したことで、実践に活用することができるエビデンスが得られました。

尿道カテーテル挿入中は膀胱内に尿は残ってないの?

北田 裕香, 大村 優華, 山上 優紀, 藤井 誠, 森脇 芙美, 宮前 貴文, 植田 弥里, 安吉 成瑠美, 辻本 朋美, 井上 智子.膀胱用超音波画像診断装置を用いた膀胱内尿量連続測定による術後尿道カテーテル留置中患者の尿流出状況の実態.日本看護科学学会誌 41 巻 p.841-849,  2021. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/41/0/41_41841/_html/-char/ja

尿道カテーテルを挿入した16人の術後患者さんの膀胱内尿量を、膀胱用超音波画像診断装置を用いて手術当日の夕方から翌朝まで1分毎に連続測定しました。

個人差が大きいものの、16名中7名(43.8%)は100ml以上の尿貯留を認め、最高値は193mlでした。

尿道カテーテルを留置していても半数近くは一時的に膀胱内に尿貯留を認めた、という結果であり、尿道カテーテル挿入中でも常に尿がスムーズに排出されているとは限らないため、下腹部の張りやカテーテルトラブルの有無を確認し、尿排出を促す用手ミルキングのようなケアを適宜行うことが推奨されるということが明らかになりました。

看護師の職業的”魅力“って?

柴田 佳純, 大村 優華, 山上 優紀, 北田 裕香, 辻本 朋美, 飯田 恵, 井上 智子.社会人経験のある看護師の語りからみえた職業継続につながる看護師の職業的魅力.日本看護科学学会誌 40 巻 p. 332-339,  2020. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans/40/0/40_40332/_html/-char/ja

社会人経験のある5年目以上の看護師15人へのインタビュー調査を行いました。

看護師になる前に、他の仕事をしていた人は、看護師という職業を他と比較して客観的に分析した上でさまざまな魅力を語られました。

「普通の人間関係だけでは関わらないような,人それぞれの奥深い面を見れたり語ってもらえたり,自分が経験したことのないような世界とかもあるんですけど,そういうのを通して,あぁ人生ってこういうもんなんだとか家族の意味ってこういうことがあるんだとか(中略)いろんな世界を見ることができて,まぁそのことが自分の人生に深みを与えてくれてるようなところがあって…,まぁやめられないな」

前の職は,会社の業績によってボーナスがドンと下がったりとか逆にボンと上がることもあったんですけど.やっぱり不安定ですよね(中略)今ってボンって下がることって絶対ないじゃないですか.チョビチョビでもやっぱり上がってはいくので.安定した給料,ボーナスもらえるっていうのも(家族が自分の仕事を)サポートしやすいかなと思いますね

少子高齢化の日本は深刻な看護師不足に直面しています。看護師が職業を継続する(辞めない)ことは最重要課題であり、離職予防のための研究は数多くありますが、なぜ辞めるのか、どうすれば辞めないのかに着目した研究が多くみられます。

そのような中でこの研究は、なぜ続けてきたのかに注目した研究であり、看護師という職業的”魅力“を明らかにし、“魅力”というポジティブな側面から人材確保対策を検討した研究です。

ダブルチェックをしないと安全性は担保されないの?

飯田恵,辻本朋美,山上優紀,大村優華,廣田大,柴田佳純,松村由美,山本崇,井上智子(2019).注射薬ミキシング時の確認方法に対する客観的評価―シングルチェック導入前後の安全性と所要時間比較―.日本医療マネジメント学会誌,第20巻,第3号,119-125. http://jhm.umin.jp/jhm50/journal/vol20/vol20no3j04.html

医療現場をはじめとして、エラーを減らす方法として”ダブルチェック”が多くの場面で行われています。しかし、2人でするため、人手と時間がかかる、中断業務が生じる、などの課題も指摘されてきました。そこでA病院では新たな薬剤処方システムが導入されるタイミングにあわせ、点滴調製時のダブルチェックをシングルチェックに変更しました。

ダブルチェック期間と、シングルチェック変更後で、インシデント発生数がどのように変化したかを調査しました。

ダブルチェック期間とシングルチェック期間で、発生したインシデント数に差はみられませんでした。最新の薬剤処方システムが導入された病院でのデータである、というただし書きは必要ですが、必ずしもダブルチェックが必要であるとはいえないと考えられます。

スライディングシートを使ったら、ケア時間は長くなる?

Omura, Y., Yamagami, Y., Hirota, Y., Nakatani, E., Tsujimoto, T., & Inoue, T. Evaluation of the effectiveness of the sliding sheet in repositioning care in terms of working time and subjective fatigue: A comparative study with an experimental design. International journal of nursing studies, 99, 103389. 2019. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0020748919301889

医療・介護従事者の腰痛は深刻であり、「職場における腰痛予防対策指針」においてスライディングシート等の活用が推奨されていますが、多忙な現場での使用はまだ十分であるとはいえない現状がありました。

そこで、実際にスライディングシートを使用した場合にケア時間や疲労はどのくらい異なるのかについて、3つの群に分けて模擬病床で測定を行いました。

  • スライディングシートを使用して、1人でケア(Sheet)
  • スライディングシートを使用せず、2人でケア(Double)
  • スライディングシートを使用せず、1人でケア(Single)

スライディングシートを使用するとたしかにケア時間は長くなりましたが、疲労は軽減されていると考えられました。多忙な業務の中であっても、積極的にスライディングシートを使用していくことが、ケア提供者にとっては有益であるといえます。

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