1.行動性体温調節・温熱的情動機構の解明
大阪などの都市部ではクーラーの廃熱でますます気温が上昇し(ヒートアイランド現象)、さらにクーラーの利用が増すという悪循環が生じています.しかし快適さを求めるのは人間の本性であり、それを一旦獲得すると止めるのは難しいところです。
ところで、なぜクーラーをつけようとするか?というと「暑い」と感じるからです。「暑さ・寒さ」という感覚は、温熱的情動感覚と一般的に呼ばれています。この感覚は行動性体温調節の動機となる情動感覚であります。つまり我々は体温調節のために(楽をして!)膨大な限りあるエネルギーを浪費しているのです。次からは、クーラーの電源を無意識のうちにONにする前に、地球のために、自分自身のために、また子供のために、地球資源のこと、体温調節のことなど一瞬考える時間を設けることを提案せずにはおれません。
一方、空調の普及により現代人は行動性体温調節(冷暖房の電源をON !)に頼るようになり、本来体温を調節するために生体に備わっている発汗などの自律性体温調節の機能を喪失しつつあります(幼児期に汗をかかないための汗腺の発達不全など)。例えば、幼児期における暑い環境での発汗機能発現過程は、そのヒトの発汗能を発達させます。この時期において発汗機能の発現不足は、のちの汗腺の機能低下をもたらします。このような現代人が将来的に増加することは容易に想像がつくでしょう。暑い日も寒い日も変わりなく外で駆け回り遊んでいる子供の姿は懐かしいものです。
このように社会的にも、生理的にも現代人の生活を大きく規定している温熱的情動感覚及び行動性体温調節機構の発現メカニズムは未だ明らかにされていません。本研究室ではこの温熱的情動感覚に関わるヒト脳内領域の解析、同時に動物を用いた行動性体温調節機構の研究を積極的に行っています。
その目的ため、fMRIやPETなどの無侵襲計測法を使ってヒトが“暑さ”または“寒さ”を感じているときの脳活動を解析しています。
1)どのように皮膚からの温度情報が上位脳に達するか?
2)その情報が情動感覚として処理される部位はどこなのか?
3)右の半球が優位であることの機能的意味とその情報処理過程(図参照)について解析しています。
温度刺激による脳内賦活部位の検索 by fMRI ご参照下さい