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研究内容

糖鎖とは?

糖鎖とは?図1 糖鎖とは?図1
  • タンパク質の翻訳後修飾に関わる。
  • 1つ1つの糖鎖は、固有の糖転移酵素の働きで生合成される。
  • 発生・分化・癌化・癌の転移によって、大きく糖鎖構造が変化する。
  • 細胞表面のタンパク質の多くが糖鎖をもち、糖鎖によって機能調節されている。
  • 多くの分泌タンパク質に糖鎖がつき、疾患バイオマーカーとして利用されている。
  • 糖鎖研究は未開の領域で、恐らくAIでも解明できないだろう。

IgGの糖鎖異常と慢性炎症

  • IgGのFc部分に結合する糖鎖構造の変化、とくにシアル酸の付加とガラクトース欠損は、リウマチなどの自己免疫性疾患やアレルギーとの関連で、注目されている。
  • 私たちの研究室では、フコシル化IgG糖鎖のガラクトース欠損率が、炎症性腸疾患の血清バイオマーカーとして有用であることを見出し、その簡易測定法の開発や生物学的機能の解析を行っている。
IgGの糖鎖異常と慢性炎症 図1

フコシル化ハプトグロビン

フコシル化ハプトグロビン 図1  フコシル化ハプトグロビン 図2
  • フコシル化ハプトグロビンは、膵がんの患者血清中で、タンパク量は変化しないが、フコシル化が増加する40Kのタンパク質として同定された。
  • フコシル化ハプトグロビンを定量できるレクチンー抗体ELISA kitを開発し、癌バイオマーカーとしての有用性を証明した。
  • 近年、フコシル化ハプトグロビンそのものに対する次世代型糖鎖抗体の作成にも成功している。
  • フコシル化ハプトグロビンが、がん組織のどの細胞が産生するのか?

Mac-2 binding protein

Mac-2 binding protein 図1  Mac-2 binding protein 図2  Mac-2 binding protein 図3
  • Mac-2 binding protein (Mac-2bp)は、ガレクチン3結合タンパクで、乳癌、胆管癌、肺癌患者の血清で増加することが古くから報告されている。
  • Mac-2bp は、NASH鑑別のバイオマーカーとして有用であることを証明した。
  • C型慢性肝炎患者では血中Mac-2bp値高値群では肝がん発症率が高い。
  • マウスでも血中Mac-2bpはNASHモデルで病態進展に伴い上昇する。
  • Mac-2bpには、何らかの生物学的機能があるらしい。

Fetuin Aと肝疾患

Fetuin Aと肝疾患 図1  Fetuin Aと肝疾患 図2
  • Fetuin-Aは肝臓で産生される分泌タンパク質(ヘパトカイン)の一つであり、TGF-βシグナル阻害作用があることが知られている。
  • 血中Fetuin-A量は、動脈効果と関係する。
  • 健診受診NAFLD患者で肝線維化進展に伴い、血中濃度が低下することを見出した。
  • NAFLD 患者の血中フェチュイン A 値は平均 IMT(中膜内膜複合体厚)値と逆相関し、特に 1mm 以上の異常値症例で有意に低下した。
  • フコシル化Fetuin Aは、胆管癌のバイオマーカーになる。

慢性膵炎のバイオマーカー

膵臓がんの前癌病変は??

顕在化した慢性膵炎は氷山の一角にたとえられる。
水面下にはその予備軍と考えられる潜在性の慢性膵炎患者が多数いるものと考えらる。
慢性膵炎のバイオマーカー 図1
膵臓がんは、慢性膵炎から発症する??

慢性膵炎のバイオマーカー 図2
  • 膵臓がんは現代医療で最大の難治がんである。
  • 難治性である最大の理由は、早期診断が困難なこととハイリスク群が同定できていない。
  • 病理学的な解析から、膵臓がん組織周囲の膵臓に慢性膵炎が存在することを見出した。
  • 慢性膵炎や膵臓がんの発症に、腸内細菌が関与する可能性を示した。

オルガノイド培養を用いた がん治療効果予測バイオマーカー開発

オルガノイド培養を用いた がん治療効果予測バイオマーカー開発 図1
  • オルガノイドは、従来の細胞株よりも実際の患者に近い疾患モデルである。
  • 従来より患者由来試料として用いられる血液や病理標本は、“静止画”的な情報しか得られない。オルガノイドは薬剤刺激など任意の刺激に対する細胞の“動的”反応を評価することが可能。
  • 京都大学クリニカルバイオリソースでは、新しいがん組織培養法であるCTOS法(Cancer Tissue-Originated Spheroid法)が開発された。CTOS法とは、患者検体から直接、高い成功率でがんオルガノイドを作製/培養する手法で、今後の臨床応用が期待されている。私たちの研究室では、井上研究室との共同研究によって、新たな治療感受性予測バイオマーカーの開発を進めている。