私達の研究室では‘健康寿命の延伸に繋がるヘルスプロモーション科学の実践’をモットーにスタッフ、院生、学部学生で研究を推進しております。研究とはその成果があくまで人々や社会がより幸せになれるような方向に貢献できるものであるべきと考え、このようなリサーチマインドを学生達が抱いて研究を遂行していけるようにスタッフは指導をしております。
主な研究内容は下図(図1)に示す通りです。
以下に具体的な研究内容を紹介します。
生活習慣病の良好な管理が健康寿命を延伸させることが知られています。当研究室では最も患者数の多い高血圧を中心に、看護師・保健師が行うことの多い生活習慣改善に対する指導法の確立やより効率の良い方法の提案、さらには遺伝素因なども考慮した患者個人にあったテーラーメイド治療の確立を目指して研究を進めています。
今後、高齢化率のさらなる上昇に伴い、医療の中心は病院から在宅へとシフトしていきます。より体系的で効率が良く、さらに患者や療養者にとって満足のいく在宅医療を提供するには、科学的エビデンスが不足していると感じています。我々の研究室では、‘包括的在宅医療確立のためのレジストリー(OHCARE)研究’(図2)を行い、在宅医療における疾病管理、栄養、身体機能、認知機能、看取りなど、種々の課題について前向きに情報収集を行っております。そして、量的な解析で関連要因を検討し、在宅診療における問題解決に導くためのエビデンス構築に寄与できればと考えています。
高齢化率の上昇に伴い介護を必要とする高齢者の割合は増加の一途をたどっています。しかしながら介護保険費用にも限りがあるため、できるかぎり介護を受けず自立した元気な高齢者が増えていく社会が望まれています。そのためには介護予防法の確立が急務です。我々の研究室では図3に示すような高齢者長期縦断疫学研究(健康長寿:SONIC研究)によって健康長寿の要因の探索を医学・歯学・心理学など多面的な視点で明らかにする試みを実践しています。ここで明らかになった健康長寿要因の実践は介護予防法確立のための目標になり得ると考えています。
周りの人々を信頼することができ、お互いに助け合う関係(互酬性)があるコミュニティ(地域や帰属集団)の方が、住みやすく働きやすいこと、また積極的な交流のあるコミュニティの方が、共に問題解決のための行動に移すことができること等が明らかとされてきています。コミュニティにおける、このような信頼感や互酬・互助意識、ネットワークへの参加などを包括して“ソーシャル・キャピタル(以下SC)”と呼ばれています。近年、SCがその地域や集団の人々の健康を守ることを示唆する研究成果も報告され、公衆衛生分野においても注目を集めています。当研究室では、人々の社会的活動である、地域活動や趣味活動等の各々の活動が、SCの構成要素である信頼、互酬性に関する様々な指標と、また、個人の健康とどういう関係にあるのかを明らかにして、高齢化著しい我が国において、より健康な地域づくり推進へ貢献することを目指します。
要介護認定の原因となる脳血管疾患や認知症、老年症候群の発症・進行の抑制には血圧管理が重要と考えられており、近年では家庭での自己血圧測定が注目されています。しかし、地域レベルで家庭血圧測定と健康寿命延伸を扱った研究はほとんどありません。そこで我々の研究室では、大阪府豊能群能勢町とオムロンヘルスケア社と産学官共同研究として‘能勢町健康長寿研究’(図)を行うことになりました。能勢町の40歳以上の方を対象として、家庭での血圧自己測定が、認知症、脳心血管疾病、老年症候群などに対して発症を予防し、健康寿命を延ばせるかを能勢町全体で検証します。 本研究は、オムロンヘルスケア社の研究グラントであるTop-Zプログラムに採択された、世界で5つの研究のうちの1つとなります。日本で選ばれたのは本研究のみであり、血圧研究に新たな展開をもたらす可能性のある世界的研究です。(採択5か国:Japan (Nose Town), Italy, Belgium, China, Taiwan)