臨床生理学研究室は2016年4月1日に新たに発足しました。当研究室は難病のゲノム・病態解析から脳高次機能・Quality of Life (QOL)まで幅広いテーマで研究を行っているのが特徴です。
私自身の研究は基礎の神経生理から出発しましたが、ある一人の患者さん、ある疾患、医療現場、あるいは社会の中で、今求められているものは何か、自分が貢献できることは何かを考え、新たなテーマ・手法にも積極的に取り組むことをモットーにしてきました。そのようなことから研究は、骨格筋疾患のチャネル生理、RNAを中心とする病態生理・ゲノム解析から、最近は自然歴・PRO・高次機能評価、患者レジストリなどにも広がってきております。また、研究手法も、パッチクランプ法といった古典的電気生理学的手法から、バイオインフォマティクスによる網羅的解析などまで幅広くなってきております。
臨床検査というと血液等の検体検査のイメージが強いかと思いますが、脳波や筋電図・神経伝導検査などの生理検査は、臨床検査技師が患者さんに触れて行う検査です。患者さん・病気を直接知る医療職としての使命を念頭に、臨床現場はもちろん研究でも活躍する人材の育成に貢献できればと思っております。
また遺伝性疾患の患者さんひとりの周囲には、遺伝情報を共有する多くの血縁者が存在します。患者ではなく通常の診療にはなじみまないこれらの方の支援を担うのが、認定遺伝カウンセラーです。2020年より大学院博士前期課程に設置された遺伝カウンセリングコースにおいて、今後まずます高度化するゲノム医療の中心的担い手となる人材を育成したいと思っております。
高橋 正紀
大阪大学大学院医学系研究科 保健学専攻 生体病態情報科学講座 臨床神経生理学 教授
大阪大学医学部附属病院 神経内科・脳卒中科 (兼任)
大阪大学医学部附属病院 遺伝子診療部 副部長