ご挨拶
2021年1月、生体物理工学講座に医学物理学研究室が誕生しました。私は当研究室の初代教授を拝命しております。
がんの放射線治療では、放射線と照射する人体との相互作用による物理反応から、化学反応、生物反応が連鎖し、腫瘍細胞を殺傷します。 医学物理学とは基礎物理学を基盤とする、放射線物理学、原子核物理学、原子・分子物理学、放射線計測学、電磁気学、物理数学、情報工学、医学、生物学などの幅広い学問の結集体であり、その知識及び成果を医学へ展開する学術分野が医学物理学分野です。
放射線治療の高精度化には、医学物理学の研究開発が重要です。大学や研究所においては革新的な医学物理学研究及び開発、研究者の育成を主体的に実施する人材が必要不可欠です。 本学の医学物理学研究室では、臨床現場や大学・研究所で活躍出来る医学物理士の研究教育と人材育成を目指します。 本学の医学物理学研究室の特色は、放射線医療関連分野に既存しない「新たな研究概念を創生する研究」に取り組んでいる点でだと思います。
放射線治療においては、陽子線、炭素イオン線(重粒子線)、中性子線を利用した粒子線治療の研究及びシステム等の開発に尽力しています。研究実施体制としては、本学の放射線治療生物学研究室及び放射線治療学教室との連携、粒子線治療関連施設、粒子線治療装置等のハード開発企業、AI等の先端技術を有したソフトウェア開発メーカー等との共同研究を幅広く展開しています。 本学の理学研究科の核物理研究センター、工学研究科の産業科学研究所など、他分野との研究教育連携にも力を入れております。それらの研究成果を医療現場へ届けやすい研究開発体制が構築されており、また、企業への研究開発者へのキャリアパス支援へ繋げる体系ができています。
本学の医学物理学研究室には、大阪大学保健学科の医療技術系出身者に加え、他大学の医療技術系出身者、大阪大学及び他大学の理工系出身者など、様々なバックグラウンドを持つ学生が集まっております。研究室に所属する学生人数が多いので、その中で、研究に対する様々な見方、考え方などの経験や知識を得ることができ、それらが最後には自身の知恵を養うことへ結びつくと思います。
皆さん一緒に、医学物理学に関する高度な研究教育を通して、臨床業務から研究開発、教育ができる高度な医学物理士の人材育成を進めて行きたいと思います。(西尾禎治)