大阪大学大学院医学系研究科 生体医用物理工学講座 放射線治療生物学研究室

放射線照射による細胞応答解析(皆巳)

がん治療において、がんの「遠隔転移」の制御は大変重要なテーマとなっています。

大阪大学は、さまざまな施設と協力体制を築いており、X線・電子線・陽子線・炭素イオン線と

放射線治療に用いられる線質を全て使用できる世界的に見ても貴重な研究環境です。

本研究室では、放射線照射後の細胞の振る舞いについて、

細胞死以外にも放射線照射後に生存した細胞の運動能や遊走能、浸潤能について、上記の線質の違いについて解析しています。

上記の免疫染色の画像は、X線と炭素イオン線を同程度の殺細胞効果がある線量を照射した後の細胞運動の様子です。

X線を照射された細胞は照射3時間後では、既に細胞運動をスペースに向かって始めていることが分かります(矢印が運動細胞を指しています)。

一方、炭素イオン線を照射された細胞は、運動を6時間以上経っても始めることがありません。

この様に、線質によって生き残ったがん細胞の振る舞いが異なることを突き止めました。

さらに分子メカニズムを解析すると、核膜貫通型タンパク質であり、細胞骨格や細胞接着と関連のある分子であるSUNに放射線が影響を与えており、

この結果、細胞接着や細胞運動に関連するシグナル経路に影響することを見出しました。

上記の様な基礎研究を通じて、適切な放射線治療を行う為の知見を集めています。