研究紹介

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研究の理念と研究の3本柱

ヒトDNAの全構造が決定し、21世紀はDNAがコードするタンパクの解析と、遺伝子のみの情報では解読できないタンパク質の翻訳後修飾が大きな研究のテーマとなります。糖鎖は、タンパク質の翻訳後修飾をなす重要な因子の一つで、多くの生命現象や種々の病気、病態に関与します。私達の研究室では糖鎖遺伝子を用いた生化学的手法(いわゆるグライコミクス研究)により、病態解析、診断さらには治療開発を最終目的とし、新世紀の臨床検査学/治療学(糖鎖診療学)を目指します。対象となる疾患は、消化器内科医(肝臓内科医)として長年扱ってきた消化器疾患とがんですが、保健学専攻の特徴を生かし、生活習慣病、アレルギー、老化など幅広い疾患の予防医学の研究も進めています。

糖鎖と病態解析

現在の医学において、いまだ病因・病態が完全に理解できないため、対症療法が治療の中心となる疾患は多々あります。がんの転移、非アルコール性脂肪肝(NASH)、炎症性腸疾患、アレルギーなどが、それらに当たるでしょう。こうした疾患の本態を探るための病態解析のツールとして、糖鎖研究を応用したいと考えています。糖鎖改変マウスを用いた疾患モデルの研究、臨床サンプルでの検証、そして新しい治療法の開発が最終ゴールと言えます。

糖鎖と疾患マーカー

糖鎖科学の基礎研究を臨床検査学へ応用します。ヒト遺伝子の全構造が明らかになり、その情報を元にした新しい臨床検査学の開発が期待されます。近年急速に進歩した糖鎖生物学、糖鎖工学の基礎データを元に、新しいバイオマーカーの開発を目指します。単にバイオマーカーの有用性を検討するのではなく、その産生メカニズムを明らかにすることで治療への応用も念頭に入れています。疾患マーカーの奥にある研究は、非常に魅力的です。さらに、近年注目されて来たStem cell biologyの研究も含まれます。また、生活習慣病の予防マーカーの開発という大きな研究テーマも想定しています。

疾患関連糖鎖の機能解析

糖鎖はがん、糖尿病、炎症など様々な疾患に直接的/間接的に関与します。疾患に関連した糖鎖の機能解明は、大阪大学21世紀COEプログラムの大きな研究テーマでありました。その流れを継承し、本研究プロジェクトでは、病気に関連した糖鎖の機能を細胞、生体組織レベルで解析します。次世代の糖鎖研究としては、種々の生命現象に関わる糖鎖標的分子を同定し、分子レベルで糖鎖機能を網羅的に解析することです。本研究では様々な臨床医学にみられる現象や疑問を、糖鎖生物学の観点から生化学的手法によって解析し、将来の診断治療に役立つ基礎データを蓄積してゆきます。

臨床研究に関する補足事項