私は、2018年11月からイングランド南東部の都市オックスフォードに拠点を置く、オックスフォード大学・生化学部にて、Postdoctoral Research Associateとして基礎研究に従事しています。オックスフォードはロンドンから電車で1時間ほどのところにあり、治安も良く、とても住み安い大学の街です。皆さんも一度は耳にしたことがある、ここオックスフォード大学は、イギリスで最古の(世界で3番目に古い)非常に歴史ある大学です。いたるところに大学施設が存在し、博物館などの文化施設もあるため、学術的かつ文化的な街だと言えます。Department of Biochemistryでは、生化学をはじめ細胞生物学、発生生物学、遺伝学、構造生物学、バイオインフォマティクスなどといった様々な分野出身の研究者が集まって研究が行われています。
私が所属するFrancis Barr教授の研究室の現在の構成は、教授、ラボマネージャー、ポスドクが私を含め5名、学生が4名です。国際豊かな研究室で、これまでにイギリス、ドイツ、スペイン、イタリア、クロアチア、ポーランド、ギリシャ、ロシア、インド、韓国と様々な国からの出身者と出会い、共に研究を進めてきました。研究のバックグラウンドの違いだけではなく、育った国や環境による考え方の違いには日々驚かされており、刺激的なラボ生活を送っています。
渡英前は、新しい環境に慣れるのに苦労するのでは?と不安だったのですが、ラボメンバーの助けもあり、なに不自由ない研究生活を送ることができています。渡英して2年以上が経ち、今の私が感じるイギリスのラボで生き抜くために必要なことは、語学力以上に研究者としての能力と人柄だと感じています。多少英語が不十分であっても大丈夫です。高度な研究技術ならびに学術知識を持ち合わせていれば、周りは一目置いてくれますし、周りを気遣うことができ且つ正直な性格であれば信用もされます。
Barr教授の研究室では、Cell cycleグループとMembrane traffickingグループに分かれて研究が行われています。渡英して最初に与えられた仕事は、CRISPR-Cas9を用いたノックアウト(KO)細胞株作成の系の立ち上げでした。研究場所は変わりましたが、やることは変わりません。今まで大阪大学で学んできた経験を生かして実験を進めた結果、プラスミドを受け取ってから1ヶ月後には実験系の確立と最初のKO細胞のクローン化を済ませ、2ヶ月後にはラボのメンバーが誰でもKO細胞を樹立できる状態にまで持っていくことができました。簡単そうに聞こえますが、これは両グループにとって有益なものだったのでFrancis含めラボのメンバーは評価してくれましたし、今ではKO細胞作成がラボにとって欠かせないものとなっています。また、PhD保持者として、自分である程度何でも出来ないといけませんし、ミーティングで違うテーマの研究をしている人たちとじっくり議論を交わさないといけません。これらを難なくこなす事が出来ているのは、渡英前に大阪大学で多くのことを学べたからだと思っています。皆さんもぜひ英語力だけではなく研究力や人間力を研究室で養ってもらえればと思います。
最後に、Department of Biochemistryで行われている催し物について少し紹介します。毎年7月と12月にそれぞれサマーパーティとクリスマスパーティがあり(コロナウイルスの影響で昨年は中止)、Departmentに所属する全ての人がその日は仕事を完全にstopしてパーティに参加します。私が渡英した最初のクリスマスパーティは特に印象的で、バンドを呼んで昼間から皆で飲み食い歌い踊ってenjoyしたのを覚えています。研究だけじゃなく、生活面でも刺激的なことが盛りだくさんな海外留学に皆さんも挑戦してみてはいかがでしょうか?きっと貴重な経験が出来ると思います。
2012年 | 大阪大学医学部保健学科検査技術科学専攻 卒業 |
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2014年 | 大阪大学医学系研究科保健学専攻 博士前期課程 修了 |
2017年 | 大阪大学医学系研究科保健学専攻 博士後期課程 修了 |
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2015年5月–2017年3月 | 大阪大学医学系研究科保健学専攻 リサーチアシスタント |
2017年3月–2018年8月 | 大阪大学医学系研究科 細胞生物学教室 特任助教・特任研究員 (原田彰宏研究室) |
2018年9月–10月 | 大阪大学医学系研究科 分子生化学教室 特任研究員(保健学科BDCさきがけ研究員) |
2018年11月–現在 | Postdoctoral Research Associate, Department of Biochemistry, University of Oxford (Francis Barr Lab) |