研究紹介

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糖鎖を利用した血清老化マーカーの探索

老化は誰もが避けられないもので、全身に様々な変化が起こります。細胞レベルを中心に徐々に老化研究が進んでいますが、その機序は複雑でほとんど未解明で、実は老化の定義すら曖昧な状態です。一般的に老化とは?と聞くと、まず脱毛や皮膚など見た目の変化を思い浮かべる人が多いでしょうか。それだけでなく体内の諸器官でも少なからぬ変化があるはずです。例えば骨粗鬆症、白内障などは高齢者が発症しやすく、老年疾患と呼ばれています。また、癌や心疾患等の発症リスクの増大、免疫力の低下にも、老化が関与しているかもしれません。

健やかに長生きするために、自分の体の状態を知る、すなわちどの程度老化しているのかを客観的に知ることがそのひとつの手掛かりとなります。しかし現在、体全体の状態を反映する指標は、見た目や感覚といった主観や年齢で、非常にわかりにくいものしかありません。癌の診断に用いられる腫瘍マーカーのような、「老化マーカー」があれば、老化をより客観的に評価することができそうです。しかし、ひとつの指標あるいは検査法で、複雑な体全体の老化の評価をするのは困難です。人間は、一体どこから老化するのでしょうか?一般的には、脳や皮膚からと考えられていますが、我々は人体最大の臓器である「肝臓」に注目して研究を始めました。

免疫グロブリンを除く血清タンパクの殆どは肝臓で産生され、しかも糖鎖が結合します(図1)。肝臓は消化や解毒を始めさまざまな役割を担っており、機能が衰えると全身に大きく影響します。まず培養細胞からスタートし、老化マーカーに有用な血清蛋白質をグライコミクスの方法により同定しています。現在、老化と糖鎖構造の変化については少数報告されていますが、今後、有用な老化マーカーが見つかれば、様々な利用価値が見いだせると考えています(図2)。しかし一方で、老化はがん化に対する生体防御機構の1つとも考えられています。老化マーカーの正体は、もしかしたら腫瘍マーカーや慢性炎症のマーカーを別角度から見たものかもしれません。いずれにしても、本プロジェクトでは老化の本質なメカニズムには踏み込まず、グライコプロテオミクスの手法を使ったマーカー検索にとどめたいと思います。