治療の概要
WT1ワクチン治療法の実際
投与された合成WT1ペプチドによってリンパ球(WT1キラーTリンパ球)が刺激され 数が増えるとともに働きが高まる。
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血液にのってがん細胞に接近する。
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WT1キラーTリンパ球は、がん細胞の表面にあるがんの目印(WT1ペプチド)をみつけ
がん細胞を攻撃する。
正常細胞の表面にはWT1ペプチドがないため正常細胞は攻撃されない。
WT1ペプチドの調製
ワクチンを混合する機械です。
調製できたワクチンを注射器に吸い取ります。
(1回に約0.6mLを数か所に分けて注射します)
投与方法
WT1ワクチンは通常外来に通院して頂いて投与を行います。
WT1ペプチドをモンタナイドISA51という免疫を活性化させる働きのあるもの(アジュバントと呼びます)と混合したものを、1~2週ごとに、皮内注射します。WT1ペプチドは人体に投与してもよい品質のものを合成して使用しています。
*投与間隔および投与期間は臨床試験ごとに異なります。
皮膚のワクチン注射を行ったところに発赤、腫脹が出来ます。下は数十回のワクチン注射を行った患者さんの注射部位の写真です。(1回につき1つです) 発赤の強さは個人差が大きいですが、ワクチンを受けた方ほぼ全員で認められます。時間が経つと徐々に色が薄れていくのが通常です。
接種部位(上腕部-肩)
接種部位(上腕部-肩)
WT1ワクチンの注射をする際は、毎回体調や臨床検査に異常がでないかどうかを調べ、異常がないことを確認してから注射をします。
腫瘍に対するワクチンの臨床効果を見るために、画像検査(MRIやCTスキャンなどを使った腫瘍の状態を調べる検査)などを定期的に行います。
費用
入院費、検査費など一般的費用については通常の入院や外来と同じく必要です。ただし、WT1ペプチドおよび特殊検査(ワクチンにより腫瘍を攻撃する免疫系が活性化しているかどうかの検査等)の費用に関して患者さんのご負担はありません。
新しいWT1ペプチドワクチン WT1 Trio
体の中には様々なタイプのリンパ球があります。ヘルパーTリンパ球はキラーTリンパ球を効率よく誘導し、維持するのに重要な役割を果たしています。大阪大学での研究で、WT1ヘルパーペプチドによりWT1ヘルパーTリンパ球を活性化するとWT1キラーTリンパ球がより効率よく活性化することが明らかになりました(下図)。さらにWT1特異的ヘルパーTリンパ球はそれ自身が直接がん細胞を攻撃する可能性もあります。
3種混合WT1ペプチドワクチン WT1 Trio はWT1キラーTリンパ球を活性化する2種類のWT1ペプチドとWT1ヘルパーTリンパ球を活性化する1種類のWT1ペプチドを混合して調製したものです。