WT1ペプチドワクチン療法とは
私たちの研究グループではこれまでになぜヒトは癌になるのかを研究し、WT1というタンパクがさまざまな種類のがん細胞や、白血病細胞などにたくさんあるが正常な細胞には無く、癌の発生に関与していることを明らかにしてきました。
そこでがん細胞や白血病細胞にたくさんあるWT1タンパクを目印としてこれを攻撃するようにすれば、がん細胞や白血病細胞だけをやっつける新たな治療法を開発することができるのではないかと考え、「WT1タンパクを標的としたがんの免疫療法」の研究を開始しました。WT1タンパクは、449個のアミノ酸からなるタンパクです。私たちはWT1タンパクの一部分(9個のアミノ酸-WT1ペプチド)が癌細胞の表面にあるHLAという分子に結合して存在し、これががん細胞の目印となることを証明しました。さらにこのWT1ペプチドを使ってからだの免疫という仕組みを活性化すると白血病や癌細胞をやっつけることができることを動物実験で証明しました。
これらの研究成果をもとに2000年12月から2002年12月まで大阪大学医学部附属病院で、白血病、乳癌および肺癌の患者さんにWT1ペプチドを投与する第I相臨床試験を開始しました。その結果WT1ペプチドを用いた免疫療法は多くの患者さんには安全に投与できること、また抗癌効果を期待できることが明らかになりました。それを受けて2004年2月から多くの種類の癌の患者さんを対象に、より抗癌効果が高いと考えられる投与方法で行う第I/II相臨床試験を開始し、脳腫瘍、急性骨髄性白血病、膵癌、肉腫、胸腺癌、肺癌、卵巣癌など多くの癌種に対し有効であることを示してきました。
2018年4月施行の新臨床試験法案の施行に伴い、現在はすべての介入臨床試験を終了し、現在は検体解析等の非介入試験のみが継続しております。2020年度以降に新たに医師主導治験としてのWT1を標的としたがんペプチドワクチン療法の実施を計画しております。
NEWS
- 2020/5/5
- 研究開発体制・業績/論文報告を更新しました。
- 2020/2/28
- 急性骨髄性白血病及び家族性大腸腺腫症に対するWT1がんペプチドワクチンが、AMEDの令和2年度「臨床研究・治験推進研究事業(1次公募)」に採択されました。