進学にあたり、当時はとくに明確な目的意識はなく、ただ単に理系であったため将来的にどこかのメーカーに務められれば良いな、という軽い気持ちで工学部を志望していました。 そんな中、大阪大学の赤本を購入した時、学部説明欄にて放射線技術科学専攻は医学と工学両方を横断的に学習することができ、尚且、国内最先端の内容を学べると記載があり、非常に興味深いと感銘を受け受験を決意しました。
4回生より研究室配属になり、そこではその後の研究生活のいろはである整理整頓から、文献検索、研究の進め方、研究報告の仕方など様々なことを指導教官、先輩方よりご指導頂きました。
大変多くの研究室の諸先輩方が海外、国内の研究施設、病院において世界的に活躍している姿を見ると選択した大学、研究室は間違いなかったなと確信がもてます。
研究室配属から、大学院修士、博士進学、大学教員を経て、現在、外病院で医学物理士として勤務していますが、研究室配属の初年度が最も大変でした。しかし、ここで教えられた研究姿勢、経験はこれまで大変支えになりましたし、今後もそうであると思います。
授業を担当する先生方は工学部や医学部出身の方々が多く、各々の専門分野の内容は非常に興味深く受け入れられました。国家試験を受験するための教科書的な授業はほとんどなく、教授の先生方の専門分野の現状や課題などを授業に織り交ぜた講義は大変刺激的でした。
放射線治療における講義では世界的な標準や今後の展望、日本の課題に関する内容が印象に残っており、自身が医学物理士として進むきっかけの一つになりました。
学部、修士、博士とキャンパスライフは人よりも十分長く過ごしました。
豊中、吹田キャンパスは大阪の繁華街から少し離れたところにあり勉強にも程よく集中できる環境です。学食の天津麻婆丼には大変お世話になりました。
大学院に進学した理由は2つあります。一つは学部時代の研究内容があまりに不出来であったため大学院でよりよいものに完成させたかったためです。これは先輩や先生方の助言もあり、自身の研究費獲得にも繋がり、曲がりなりにも形として残すこができました。
もう一つは、医学物理士になるためには修士、博士において臨床現場での研修が必要不可欠であると感じたためです。
医学物理士は主に放射線治療領域において治療計画や治療機器の品質管理を主導的に行うものであるとされています。物理、工学、医学の複合的な知識が必要とされ、また、医療の分野において最もIT化が進んだ領域の一つであるため、常に最先端の技術を追求できる点に大きな魅力を感じました。
大学卒業後は医学物理士として、教員を経て、病院に勤務しています。
ただ、業務内容はどちらも大きく変わらず、放射線治療における治療計画作成、品質管理業務、医学物理に関する研究業務となっています。 医学物理士の仕事はがんを克服するために、放射線物理学、計測学、画像工学、情報工学など多岐に渡る技術が常に必要とされる進歩の早い領域でもあります。それらの技術を臨床応用するための業務、研究開発はやりがいのある仕事であると感じています。
現在、医学物理士認定教育コースが15大学以上に設置され、より洗練された教育体制が構築されています。大阪大学はその中でも非常に優れたコースであることは間違いありません。
また、病院において医学物理士の重要性や雇用が確立されつつあります。今後、大阪大学の認定コースのもと優秀な医学物理士がたくさん生まれ、ともに医学物理士という職域を大きく確固たるものにしていけることを強く期待しています。
医学物理士として、研究者としての基礎を育んでくれた場所です。
病院、企業、大学など進学、就職先は様々でありますが、年に数回開かれる学会等でたくさんの恩師、先輩、後輩、同級生等と顔を合わせ、意見交換できる機会が多いのもこの分野の良いところであると思います。
大半の学生さんが大学四回生になり、研究活動をスタートするかと考えます。研究活動はあまり楽しくない時期もあるかもしれませんが、これまでの授業とは異なり自身で内容を決定できる新たな場となります。
卒業までに他人とは違った自身のスキルを研究を通して見つけることができれば今後の人生で大いに役立つものとなると思います。
大阪大学ではそのようなスキルを見つけるための環境が大いに整っていると考えます。